- 市場の動きを追跡し、戦略的にトレードを行う上で、様々なテクニカル指標が使われます。VWAP(出来高加重型平均価格)やTWAP(時間加重型平均価格)、そして移動平均線は、多くのトレーダーにとって重要なツールです。本記事では、これらの指標の違いと、参照価格ベンチマークを活用したトレード戦略の考察を紹介します。
VWAP(出来高加重型平均価格)
VWAPは、バイサイドの機関投資家や大口投資家が日中のトレードの目安として利用する主要な指標の一つです。VWAPは、日中の出来高に基づいて計算される平均価格で、トレーダーは実際の買付価格をVWAP以下に抑えることを目指します。これにより、トレードコストの最小化が図られます。
VWAPの計算方法は以下の通りです:
- 各時点での取引価格と出来高の積を全体の出来高で割ることで求められます。
VWAPを使用することで、トレーダーは一日の取引の進行に合わせて出来高に反映された市場の実態を捉えることができ、特に流動性が高い場面では有効です。多くのトレーダーがVWAPに基づいて取引を行うため、この価格帯に近づくと売買のボリュームが増える傾向にあります。
TWAP(時間加重型平均価格)
TWAPは時間に基づく平均価格で、VWAPのように出来高は考慮されません。TWAPは、特にリアルタイムデータでのトレードや、出来高が不確定な市場環境で利用されることが多いです。
TWAP
TWAPの特徴は以下の通りです:
- 一定期間内の価格を単純に時間で均等に重み付けして平均を算出します。
- 出来高を無視し、時間的な価格変動のみを反映します。
このため、TWAPは価格の変動を時間の経過に沿って均等に捉えるため、急激な出来高変動がない市場や、長期的に均等に取引を行う際に適しています。
VWAPとTWAP及び移動平均線との違いをさらに簡単に記載したブログ記事はこちらです。
移動平均線との違い
TWAPは時間に基づいて価格の変動を捉えるという点で、移動平均線と非常に類似しています。しかし、大きな違いがあります。移動平均線は時間の経過に従って計算範囲が更新されていく「ローリング型」であるのに対し、TWAPはある固定期間内での価格を計算する「アンカリング型」の指標です。つまり、移動平均線は常に最新の価格を含む期間で算出されるのに対し、TWAPは特定の期間を設定し、その期間全体での平均を求めます。1分足TWAPの場合は、9:00~9:04:59で5つのデータを使うのに対し、9:00~10:04:59では65個のデータを使います。
この違いは、長期的なトレンドを把握したい場合に移動平均線が適している一方、短期的な価格の平均を把握する場合にはTWAPが有効であることを示しています。
参照価格ベンチマークとの関係
VWAPやTWAPは、取引のタイミングに応じて参照される価格ベンチマークとしても利用されます。以下のように、トレードの各段階で異なるベンチマークが使われます:
- Pre-trade Benchmarks: 取引開始前に決定される価格(例:前日の終値や開始時点の価格)
- Intraday Benchmarks: 取引中に参照される価格(VWAPやTWAPなど)
- Post-trade Benchmarks: 取引終了後の価格(例:終値)
- Price Target Benchmarks: 取引目標として設定される価格(例:リミットオーダーの価格)
VWAPやTWAPは、特にインターデイベンチマークとして有効です。VWAPは出来高を考慮するため、大量の注文を処理する際に有利な価格を導き出します。TWAPは出来高に影響されないため、時間に基づいた価格安定性を評価したい時に有効です。
VWAP、TWAP、移動平均線は、それぞれ異なる特徴と適用範囲を持つテクニカルツールです。VWAPは出来高に基づく平均価格で、特に流動性の高い場面でのトレードに有効です。TWAPは時間に基づいて価格を算出し、特定期間の価格安定性を評価するための指標として役立ちます。そして、移動平均線はローリング型で、長期的なトレンドを把握する際に適しています。
参照価格ベンチマークとの組み合わせにより、これらのツールはトレード戦略の立案において非常に強力な武器となり得ます。市場環境や取引の目的に応じて、最適な指標を選び、効果的なトレードを実現することが重要です。
トレード戦略を強化する!VWAP、TWAP、移動平均線の使い分け
