マーケットには大きく分けて二つの種類があります。
- マーケットメイカーが売買気配を提示するクォートドリブン方式
FX業者、海外ブローカー、相対取引、暗号資産販売所
- 顧客のオークションにより成り立つオーダードリブン方式
株式市場、先物市場、暗号資産取引所
いずれもメリット・デメリットがあり、顧客へのサービス向上、すなわち流動性を維持する目的でこのような方式を選択しています。業者サイドから見てクォートドリブン方式のほうが顧客の注文を吸収できることから収益性が高いです。オーダードリブン形式のほうが公平であるというところでしょう。
オーダードリブン方式での指値注文と成行注文
東証は純粋なオーダードリブン方式を採用しており、市場参加者同士で市場をメイキングしないと成り立たないようになっています。このオーダードリブン市場で流動性を提供する注文というのが指値注文であり、逆に流動性を枯渇させる原因となる注文が成行注文です。暗号資産取引所ではこの指値注文のことをメーカー注文、流動性を枯渇させる原因となる成行注文をテイカー注文と呼びます。
板を食う指値注文も流動性を枯渇させる注文なので成行注文と同じと考えてよいでしょう。この注文方法をはじく機能がPost-Only (ポストオンリー)機能です。メーカー注文を出してくれるほうがありがたいので、手数料の割引や取引所によってはマイナス手数料(注文が約定したらお礼として手数料分を獲得できる)を導入しているところもあります。
基本的には、市場での注文は指値と成行のみが存在し、指値×成行の組み合わせのみで約定が成立します。(複雑な注文も分解すれば必ずこのような形態になります。)
HFT業者と機関投資家
HFT(高頻度売買:High Frequency Trading)による存在意義については賛否両論です。HFTトレーダー自身は、流動性を提供していることで社会貢献をしていると主張していますが、ほとんどの取引手法が板を食うような取引ですので、どちらかと言えば流動性を枯渇させていると言った方が正しいことになります。
一方でマーケットメーカーも株式市場、先物市場、暗号資産取引所といったオーダードリブン方式のマーケットに参入できるのですが、これは例えば運営主体が謝礼を払ってレート提示を依頼しています。その謝礼に見合ったスプレッドでマーケットメーカーは指値注文を出して流動性提供に貢献しているということです。従来の機関投資家のアルゴリズムトレードはVWAPなどを基準にした指値主体の注文形式でもありますので流動性を提供する側です。
指値注文は有利なのか?
指値注文は価格だけを見る限りにおいて一見して有利に見えますが、実はそうではなく機会損失やタイミングのロスなどで短期売買で勝負するときには成行注文のほうが有利です。指値で出すのは、安い値段で買いたい・高い値段で売りたいという心理的な安心感のみが得られる一方で、約定できないといった弊害がもたらされることになります。
トキシックフロー(有毒な注文)
FX業者は顧客の注文を全て受けますので、ポジションがきれいに相殺されるのであればそのスプレッド分を儲けることができますが、ポジションが傾いてかつ不利な方向に動けば損失を被ります。業者にとって好ましくないフローをトキシックフロー(有毒な注文)と言いますが、相場で勝つためにはこのトキシックフローを業者に出すことを考えてもよいと思います。トキシックフローは、流動性を支えるテクノロジーと直接的な関係にあります。
不適切な市場レートでの取引、洗練されていないFXテクノロジーの非効率性を利用した取引(業者システムの不備を突いたトレード)、複数の取引所で全く同じ時間に同じ方向の取引を行うことなど、トキシックフローには様々な形があります。業者には歓迎されませんが、甘いフローを出すくらいであれば厳しいフローを出して業者を出し抜きたいところです。業者システムの不備を突いたトレードはアカウント凍結の可能性がありますが、「全く同じ時間に同じ方向の取引を行う」などは事前に予定されている経済指標の発表時を除き、利用してもよいと思います。中にはぬるい業者がいるんですね。
これは暗号資産取引所にも当てはまります。こちらはオーダードリブン方式が多いですが、置きっぱなしの指値が残っている可能性もありますのでマーケット実勢に遅延した取引所の指値を叩くといったストラテジーも有効です。