AIJ問題

AIJ問題が表面化し、国内運用業界には未曽有の事態が訪れている。金融庁は独立系投資顧問の監督を強化し、厚生労働省は厚生年金基金の調査により基金の大半で天下りが行われている実態が明らかとなった。問題の本質からすると当局の行動は単純に正当化されるものではなく、いささかピントがずれているようにも感じるが、運用及び年金姿勢にメスを入れたことだけは確かである。

以下、金融詐欺、想定運用利回り5.5%、当事者意識の欠如の三点を切り口として議論を展開していくものとする。

1、金融詐欺
金融詐欺を見破ることは難しいと言われているが、間違いなくどこかで詐欺であるというシグナルがチラついているものである。今回のAIJの件でも、書類上で詐欺を見分けるのは確かに難しかったのかもしれないが、典型的な詐欺手口であることに変わりはない。詐欺師が、被害者の現実逃避とありえない理想をうまく利用しているのがそのパターンとなる。例えば、熟練した運用経験者であれば運用の労苦や抑えるべきポイントが自然に掴めているのでこのような金融詐欺に遭遇することは滅多にない。表面的なものだけを見ているからこのような詐欺が起こるし、カモが多いから詐欺師も蔓延するのである。

2、想定運用利回り5.5%
想定運用利回りが高いとの批判があるが、運用に関して言えば想定運用利回りを目的にしてはいけないものである。確かに便宜上、想定運用利回りを明示していることはあるにしても、当事者が堅持しなければならないのは運用リスクのみである。ここは、「勝ちに不思議の勝ちあり、負けに不思議の負けなし」の格言がピッタリではないかと思われる。

3、当事者意識の欠如
そもそも、年金受託の制度が崩壊していると言ってもいいかもしれない。原則回帰すれば、従業員等の年金運用を任す人(委託者)が自分たちで運用するのが困難だから、代理人である受託者に運用を任せるというのが本筋である。つまり、従業員等の年金運用を任す人(委託者)が自分達の責任において、運用を行う代理人(受託者)を選別しなければならない。従業員は知識を補うために、年金基金責任者を雇うのである。そして、運用を行う代理人(受託者)はその責任において、自分達で資金を増やせないから第三者である運用会社に頼むのである。

誤解を恐れず簡単に図示すると、従業員→年金基金責任者→運用者という流れの中で、最も意見を主張しなくてはいけないのが従業員である。そして、年金基金責任者は大事な資産を預かっているわけだから従業員の最善を考慮して運用者を選ばなくてはならない。だから、問題が表面化した場合に責任を負わなければいけないのは任命権が最も上流の従業員であると言える。

だが、現実的にはその流れは逆転し、運用者が最も上流となってしまっている。だからこそ、従業員や年金基金責任者は下流に対して権限を強めなくてはならないのだが、そのようなフローが形成されている痕跡はない。

従業員にとって、給料から厚生年金保険料が抜き取られているというだけの感覚であり、思考の欠如だと言ってもいいかもしれない。ちなみに今回の件は、責任上の最も上流の従業員が責任転嫁したような形となっているので、その損失を税金で穴埋めするという理屈は成り立たない。国民相互扶助の下、困った人を助けるために税金を使うのはいいかもしれないが、責任放棄した者に税金を使うというのは違う。これもまた、税金を使う人(代理人=政治家)の意識欠如であり、それを選別している国民の責任となってしまっているのである。

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