ヘッジファンドの破綻

2010年度はヘッジファンドの収益性も回復し、多くの資金が流入したと聞きますが、リーマンショック直後にはヘッジファンドの破綻が相次ぎました。なぜリスク管理を徹底しているであろうヘッジファンドがこうも簡単に破綻するのでしょうか?

まず一つ目は、流動性のない証券の運用とそれに対してファンドの現金比率が小さいという問題です。マネージドフューチャーズ型(CTA)や短期のグローバルマクロ型であれば現金比率が高いので問題は起きにくいのですが、多くのヘッジファンドは、長期保有を目的とした証券をアセットクラスとして選択しています。

例えば、誰も知らないような流動性のない証券を保有していれば、たとえ評価額がプラスであったとしても、駆け込みで売却した場合にマイナスを計上することも十分に考えられます。しかし、収益体制が保護されているヘッジファンドの資金流動性の問題でも説明したように、運用パフォーマンスは決算時点での評価額で計算されることから、過大評価された数値を元に投資家に対して手数料が差し引かれるのです。

ヘッジファンドは、一定の解約に応じられるようにある程度の現金保有をしていますので、有事でない場合にはそのパフォーマンスに見合った利益分を引き出せますが、何か突発的な事象が発生した場合に、この資金流動性の問題が表面化していきます。

例えば、サブプライム問題、テロ、不祥事等の突発的なニュースがあると、ファンド資産は毀損することになりますが、投資家の解約も同時に殺到します。ファンド運用者の立場としてはその解約に必ず応じなければなりません。つまり、出金のための現金が必要になるのですが、現金を捻出するためにインパクトの少ない流動性のある証券から現金化していきます。それでも足りない場合は、流動性のない証券を現金化する以外に方法がなく、更にその行動が他のファンドにも波及すればマーケットが崩壊することとなり、全体の運用パフォーマンスは最悪のものとなるのです。

このように、ファンドの構造によって破綻してしまうのは目に見えるわけですが、なぜこのような構造を取るファンドが多いのでしょうか?理由は単純で、流動性のない証券を対象としたストラテジーが儲かりやすいからです。流動性の低いものや小型株は良いパフォーマンス結果を残す可能性が高いということが学術的な研究発表でもなされており、どうしてもファンドマネジャーとしてはそういった投資銘柄を狙う傾向にあるのが実情です。結果として、よい時には成功報酬をたんまり頂きながらも、悪い時には事なきを得るような仕組みが既に築かれているわけです。実際は、失職や精神的なショックによりノーダメージではないのですが、実際の損を被っている投資家と比べれば無傷だと言ってもいいでしょう。

二つ目は、投資詐欺の問題です。たいていは論外と言っていいほど手口が稚拙(絶対儲かるとか利回り○○%保証等)ですが、マドフ事件に関しては業界に衝撃が走りました。巨額であるということもありますが、経歴が元NASDAQ会長ということもあり投資家の目が曇ってしまったのが原因でもあります。明らかな詐欺でなくとも、アマランス・アドバイザーズの天然ガス巨額損失取引及びファンドマネジャーのモラル低下もありますので、注意が必要です。

以上、きちんとした運用ポリシーを持っていれば儲けられなくても破綻は免れるわけですが、破綻するにはこのような理由もあるのだということで、今回の結論とすることに致します。

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