収益体制が保護されているヘッジファンド

ヘッジファンドの収益体制は、運用資産残高にかかる管理報酬であるマネジメントフィーと、得られた利益からの成功報酬であるインセンティブフィーから成り立ち、マネジメントフィーは約1~2%、インセンティブフィーは20%前後くらいが基本的な相場となります。例えば、マネジメントフィーが2%、インセンティブフィーが20%と仮定し、100万円のファンドが120万円になった場合を計算すると下記のような計算式が得られます。

管理報酬: 100万円×2%=2万円
成功報酬: (利益20万円-管理報酬2万円)×20%=3.6万円
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合計手数料: 管理報酬+成功報酬=2万円+3.6万円=5.6万円

この手数料5.6万円を差し引いて、114.4万円が翌期の運用資産残高となります。一般的には手数料控除後のパフォーマンス開示が求められていますので、ファンドリターンは14.4%となり、投資家も14.4%の利益を手に納めることが出来るという計算です。通常はここから更に税金がかかります。

ここで問題が二つ出てきます。まず一つ目が成功報酬の問題です。利益が得られれば投資家もファンドマネジャーも懐が潤うので一見よい報酬体制にみえますが、ファンドが損失を被った場合、ファンドマネジャーによる金銭的なダメージは一切ありません。そういう意味では投資家のみがリスクを背負うことになりますので、この報酬は損失が限定できるいわゆるオプションのようなリスクだと揶揄されており、ファンドマネジャーが丁半博打に打って出る動機にもなります。

二つ目の資金流動性の問題は金融業界に根強くはびこる悪しき問題であり、リーマンショック後のマーケット崩壊にも関連します。運用パフォーマンス評価は値洗い評価で行うわけですが、例えば保有株式100円のものが80円となった場合に、運用資産は80円になったという計算結果を発表します。公正な評価のように見えますが、ファンドの内部では保有株式を売却していませんので少なからず運用パフォーマンスは過大評価されていることになります。

ヘッジファンド業界の人材は玉石混交です。大手金融機関で経験を積み、今後は自分の力を試したい、もしくは機関投資家である限り制約・規則等で思うように運用できなくなったので、より自由度の持てるヘッジファンドの形態で運用を継続したい等の真面目な理由でヘッジファンド運用を始めるものがいる一方で、山っ気が多く手っ取り早く儲けたいという輩もおり、レバレッジやリスクを考えることなく博打を打つ運用マネジャーも少なからず存在します。ヘッジファンドが儲かるビジネスだと考えられるゆえんは、収益体制が守られているというところにもあります。

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