以前、相関係数と値動きの関係についての記事で、相関だけでヘッジをするととんでもないことになるというお話をしました。今回は、変数を3つだけ使って相関係数とベータの関係を説明したいと思います。
・対象銘柄の標準偏差
・マーケットの標準偏差
・対象銘柄とマーケットの共分散
共分散とはそれぞれ対応するデータ組を掛け合わせたもので、二組が共にどのようにバラついているかを示しています。数値そのものは、例えば学力テストであれば平均50点、株価であれば平均9000円などバラバラに表現されているのでそれを標準化するプロセスが必要となります。そこで、分母を二組の標準偏差で掛け合わせたものとして標準化すれば、最大が1で最小が-1と物差しのように比較することが可能となるのです。
相関係数=(対象銘柄とマーケットの共分散)/(対象銘柄の標準偏差×マーケットの標準偏差)
次にマーケットに対する標準化を考えてみましょう。マーケットと同じように動いているかどうかを判断するには分母を調整する必要があります。相関係数が二組の関連性を示していたのに対し、上記式の対象銘柄の標準偏差をマーケットの標準偏差で置き換えることで、今度はマーケットベースでの物差しに変化します。具体的には、マーケットと同じ割合で動くのであれば1でマーケットと同じ割合で逆に動くのであれば-1という式に変わり、これは金融用語でβ(ベータ)と呼ばれています。
β(ベータ)=(対象銘柄とマーケットの共分散)/(マーケットの標準偏差×マーケットの標準偏差)
ベータ・ニュートラルヘッジは、マーケットの動きを相殺するように仕組むヘッジ手法です。対象銘柄のベータが2と1で比較した場合、ベータが大きいほうがよりヘッジ枚数が増えることになります。
(対象銘柄金額×ベータ:2)-(マーケット連動先物等)=ゼロに調整
(対象銘柄金額×ベータ:1)-(マーケット連動先物等)=ゼロに調整
また、直観的に受け入れやすい金額ベースでのニュートラルヘッジというものもあり、これは取引総額を合わせるだけのヘッジ手法となります。
どちらの手法でも完全にヘッジすることは不可能であり、ベータ・ニュートラルヘッジは個別のリスクが付きまとう問題が、金額ベース・ニュートラルヘッジは値動きが噛み合わないという問題が付きまといます。
ベータ・ニュートラルヘッジのほうがうまくヘッジできるような気になりますが、ベータの計算段階で計算期間を決めなくてはいけないことと、常に変動するがゆえにとっさに判断しにくいという問題があります。仮に何らかの理由で個別株を手仕舞いできなかったとき、とっさの判断で日経平均先物でヘッジするときなどは、どちらかというと金額ベース・ニュートラルヘッジの手法のほうがより現実的かもしれません。事前にベータ値を計算できていればいいのですが、実務では金額ベース・ニュートラルヘッジをするというのが殆どのような気がします。
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