システムトレードはHFTを凌駕する

HFT(ハイ・フリークエンシー・トレーディング=高頻度売買)の形態をとる運用会社は存在しますが、すべてが似ているといったわけではなく、独自手法を構築していることからもそれぞれは全く別のものとみなすことができます。便宜上、これら集合体を称してHFTとしていますが、とはいっても共通している部分もありますので、その共通部分とシステムトレードと何が異なるのか、以下で比較してみましょう。

HFTは、アカデミックベースのモデル構築部分と発注を実際に行う執行部分とに大きく分けることができます。まずモデル構築部分ですが、こちらはいわゆるクオンツ部隊により編成されます。ティックデータ、気配データ、板の厚みといったビッグデータと呼んでもよいくらいの大量のマーケットデータから、例えば経済指標発表時やオープン時のイベントに照準を合わせて価格の歪みが発生しているのかどうかを定量的に分析します。高度数学を用いますが、実際には数学者が扱うプログラミング言語やアプリケーションを使い、データマイニングを徹底的に行います。ほんの小さいアノマリーが見つかりますので、それを実現させるべく大数の法則に基づいて売買を執行しなければなりません。逆に言うと、大量かつ高頻度で売買を繰り返さなければ成立しないモデルがここで生まれるということになります。人材がものをいう世界ですから、クオンツには莫大な金を投じます。

次にそのアイデアを実現するためにいわゆる究極の発注システムが必要となってきます。こちらは大規模システム構築といった取引所や私設取引所を構築するようなスキルが求められ、マイクロ秒単位での注文執行のためにハード・ソフト面での質を追及していきます。どう実現するかということですが、具体的には優秀な人材を雇うということになります。優秀なベンダーに外部発注するよりも、自前で構築することでストラテジーを守秘することができ他者との優位性が保てますから、金に糸目をつけず人材を囲みこみます。

これら高コストの運用を維持するにはどうすればよいのでしょうか。答えは簡単で、儲けたお金をさらに再投資(クオンツやITシステムに投資)、高品質なリターンを享受し、そしてそのリターンをさらに再投資するといった繰り返しゲームが始まります。資金を預ける顧客にも、高コスト体質ながらその費用支払いを求めます。

そのような何十連勝としている組織体と比べると、ひっそりやっているシステムトレーダーは太刀打ちできないと考えてしまいますよね。

しかし、彼らは高コスト体質でありその体系を維持するために儲け続けなければいけないという問題を抱えています。モデルを構築し、執行するといったサイクルが一つでもかみ合わなくなると途端に赤信号がともります。リターン・リスクだけを見ると到底かなわないですが、プレッシャーやマーケットの中の立ち回り等を考えれば、システムトレーダーは気楽なものです。

システムトレードもHFTも似たようなものです。しかし、システムトレードで勝つには一つのひらめきがあればよいですし、プログラミングスキルが低くても、きちんと対応できるアプリやプラットフォームといった業者提供のツールを賢く使えば全然問題ないです。

HFTは規制当局にも睨まれており、事業をやめるリスクというのが高まっています。しかし、前述のようなことを考えれば「やめる」という選択肢ですら膨大なコストが伴います。

相場は心理ゲームであることからも難しい難しいと言われますが、とはいっても上がるか下がるかの2次元です。チャートなんて紙にも印刷できる程度なので、まあ気を張らずに頑張っていきましょうということで今回は締めくくりたいと思います。(笑)

2 件のコメント

  • あけましておめでとうございます。
    昨年はお世話になりました。
    今年もよろしくお願いします。

    たしかに、一口にシステムトレードと言っても、多岐にわたりますよね。
    HFTは当局から嫌われていますが、、また新しいシストレが登場するんでしょうね。。
    興味深いですね。。

  • saru999さん、ご無沙汰ですね!

    あけましておめでとうございます。今年もよろしくお願いいたします。

    HFTだけでなく短期売買ですら嫌われている感もありますが、とはいってもこれら手法がないと長期投資家が存続できません。マーケットには多様性が必要であるというのは実際の生態と比べても同じということが言えそうです。システムトレードと言っても、きちんとしたスタイルを持つということが大事であり、決して卑下することはないですよ。ということが書きたかったです。

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